私がまだ、幼い時、甘いものは贅沢品でした。我慢するのが当たり前の時代。 そのころ、最高の贅沢はハンバーグでもオムライスでもなく父が作ってくれたオリジナルのパン 食パンにただ、バターを塗って砂糖をまぶしただけの食べ物が本当においしくて・・・ もう、ずいぶん昔の話です。 亡きお父様のそばで娘様がお話しされてました。 一緒に作りませんか? そう提案させて頂こうと考えましたが憔悴(しょうすい)しきった喪主様にお声掛けはできませんでした。 そっとして差し上げる。 それもまた、グリーフケアの一つであると思ったからです。 ご葬儀の日、少しずつ現実を受け止めつつある 家族を前に、「お父様のオリジナルには、足元にも及びませんが私なりにお作りしてみました。もしよろしければ」と再現したパンをお供えさせて頂きました。 「不思議ですね。あの頃の親子に戻れた気がします」 喪主様の涙が印象的でした。
※グリーフケアとは
《グリーフ(grief)は、深い悲しみの意》身近な人と死別して悲嘆に暮れる人が、その悲しみから立ち直れるようそばにいて支援すること。一方的に励ますのではなく、相手に寄り添う姿勢が大切といわれる。悲嘆ケア。